明けましておめでとう御座います
また新年となり2018年を迎えました
今年も以前710にボアアップしたGPZ400Fの広島県のお客様より!
牡蠣の差し入れを頂きました
毎年申訳ありません
なかには広島名物のせんじ肉も・・・・
有難う御座います
そしてこのFXのオーナー様より!
ようかんの差し入れを頂きました
有難う御座います
そして今年の一発目の車両はZ400FXの入庫です
今回入庫したFXです
タンクは仮のタンクですが普段は白と赤のツートン
先月のBGで特集されたFXみたいで地元のお客様も!
「あっ!あのFXですか!」
と!ご存知の方が多くいました
今回570までボアアップですが肝心のエンジンはバラバラになっての入庫です
以前エンジンを他店でOHされたらしいのですが・・・
不調だったみたいです
持ち込まれた部品を見てみると
カムシャフトは楕円に変形しています・・・・
吸気も排気のカムもカムホルダーの部分が異常に摩耗しています
カムはゴミ決定です・・・
ヘッドが使えるかどーか・・・・
良品のカムを仮組して点検します!
カムホルダーの内径が摩耗しているとカムを良品に交換しても音が出るからです
良品のカムを組んでカムを動かします
どの様に見極めるかと言うと手の感覚(いつもこの方法)
FXはダイヤルゲージを入れれないのでこの方法でしか点検出来ません
このヘッドはタペット調整を丁寧にすれば問題なしです
それと気になったのが!
シートカットの30度面が大きく切り取られているのが目についたのですがこれは内燃機屋のシートカットの痕跡です
燃焼室の容積が大きくなり圧縮が低くなります
まっ。そこはピストンで圧縮を上げるので問題ないのですが問題は45度面の深さ!
バルブを組み測定すると恐らく2.40前後のシムが入っていたと思われます
問題なしです
預かった部品を見ていくと!
コンロッドメタルが出てきました
全滅だったみたいです
以前OHしたお店はオイルを入れ忘れたのでしょうか・・・
納車前からエンジンがガラガラ異音がして走れない状態だったらしいのですがしっかり請求されたらしいです・・・
せめて走れる状態にしてほしいですね。
でも過去のお客様はOHで80万請求されてオイル上がりとか腰上ボアアップでワイセコを入れられて合計100万とかトラブルを抱えご来店されたお客様も多くいらっしゃるのです
エンジンのOHと言っても店により内容は様々です・・・
今回のエンジンはお店と言っても素人組のエンジン・・・・
点検する箇所が多いので少し大変です
これは今まで何度も書いてきましたが本当に暴走族が潰したエンジンの方が修理しやすいです
上記にも少し書きましたが測定工具が使えない箇所は一度仮組し感覚を研ぎ澄まし点検と言う工程が多くなるからです
クランクケースに一つ問題発見!
ノックピンの奥でボルトが折れ込んでいます
ゼファークラッチなら問題ないのですがこちらのお客様はFXクラッチで組みます
FXクラッチの場合スプロケカバーを4本のボルトで固定するのですがそのうち1本でも折れると致命的なトラブルになります
クラッチを切るとスプロケカバーがしなって浮き上がるからです
レバーを全開に切ってもエンジン側では半クラ状態です
そのまま走行するとギア抜けのトラブルを引き起こします
なのでここの折れたボルトを抜き取ります
ノックピンを抜き取ります
そしてドリルで穴を空けると折れたボルトが動いたので!
ボルト穴に逆タップを入れ抜き取りました
ラッキーです
話は変わりますが皆さま年末はいかが過ごされましたか?
私は31日の午前と1日の午前だけ仕事をして昼からは休みました
昼からは新倉庫の塗装をしました
サイドカーの格納庫です
手前がゼファー750のサイドカーで奥のは私の680のサイドカーです
その奥に写っている白いコンテナ
ゼファー750のサイドカーのお客様経由で格安で購入したコンテナの塗装を年末年始にしました
塗料は岡山県のゼファー570のお客様が置いて行って下さった塗料とハケとローラーでとても低コストで仕上がりました
あの白いコンテナが!!
艶消しの黒になりました
裏も一部マッドマックス仕様
ここにサイドカーと!
長女のトライクを格納することになりました
これが我が家に来てから外に出るとき二足歩行で歩かなくなりました
何処に行くにもトライクに乗って移動します・・・・汗
仕事に戻ります
エンジンを全分解しマスキングしサンドブラストします
腐食がひどかったですが綺麗な下地が出来ました
エンジンをペイントします!!
半艶の黒にペイントです
このクランクケースはE1のド初期
570ccの場合クランクケースのボーリングは基本必要ないのですがFXの初期は少し加工が必要です
ボーリングとまでは言いませんが少しリューターで加工すればOKです
このクランクケースも加工しました
このタイプのクランクケースはゼファーのシリンダーですら入りません
エンジンを組んでいきます
でも持ち込まれたエンジン内部の部品は全滅です
まずはクランクシャフト!!
当店の良品に交換します!!
FXクランクの注意しないといけない箇所があります!!
ジャーナル部は当たりまえですが!
ここ!
ポイントの部分です
FXはポイントのガバナのシャフトが飛び出しているので転倒すると曲がっている物があります
ゼファーは殆ど大丈夫ですがFXは注意が必要です
この良品のクランクは以前ボアアップしたFXのお客様が
「他のお客さんに使って下さい」と寄付して下さいました
コンロッドも交換します
それと!
ミッション!!
ハウジングはガタガタに摩耗しそれ以前にセンターナットが緩みません
ミッションも摩耗しているのでアッセンで交換します
このミッションもFXユーザーでRホイールワイド化でゼファーミッション流用したお客様からの寄付パーツです
クランクケースのミッションを固定するピンがありません
ここはまた差し込めば問題ないのですが滅多に抜ける部分ではありません
FXの初期は加工精度が悪かったのかもしれません
ちなみに当店に入庫した一番古いFXはエンジン番号11です
このピンは頭にチョンとボンドを塗って組んでおけばOKです
これでひと段落です
エンジン内部の良品の部品が集まったので腰下を組んでいきます
クランクとコンロッドを組みます
クランクメタルコンロッドメタルを交換しクリアランス測定をします
ミッションも良品に丸ごと交換
と、言いますかクランクケース・シリンダー・ヘッド・ヘッドカバー以外全交換
でもクランクケースが使えて良かったです
クランクケース以外は今までのお客様の寄付パーツで全て組めます
ヘッドもFXユーザーはGPヘッド化のお客様も多いのでFXの良品ヘッドは在庫あります
ロアケースを組んでボルトを交換します
とても綺麗です
そしてワンウェイクラッチとオイルポンプを組み込みます
ワンウェイクラッチはゼファー!
オイルポンプも全て寄付パーツ
なんかとても贅沢なエンジンになってきました
オイルパンを組んでひっくり返します
強化クラッチを組みました
そのクラッチが入っているハウジング・ハブ・プライマリーギアはゼファーです
でも旧ミッションからこのニードルベアリングだけ救出しました
工場の中を探せば多分50個ぐらいはあると思うのですが探すより時間短縮できるので緩まないセンターナットをサンダでカチ割り救出です
この部品は元々組まれていたエンジンの部品です
次はシリンダーヘッドの修正
このヘッドは30度面がとても大きく切り取られています!
以前シートカットした人がかなり深く加工したみたいで燃焼室がとても大きくなっています
45度を綺麗に整え70度でシートリング内径拡張しました
全てのシートカット完了です
カーボンを落とします
バルブの状態は少し摩耗してますが良好でした
全てのバルブの修正完了です
バルブの突き出し量を測定し0.3ミリカットし焼き入れをしました
次OHする時タペット調整できない!!
なんて事にならない様に加工しているので次OHする時も問題なくシートカットできます
吸気ポートを拡張し!
排気ポートも拡張しました
FXヘッドでパワーアップです
フィンの研磨は無し
打ち合わせでは純正風に研磨の予定だったのですが以前分解した人が叩いてフィンを割った痕跡があり溶接肉盛りされた痕跡があったからです
溶接はしっかり付いているので問題ないのですが研磨すると巣穴が出てくる事があるのです
巣が出るとそこだけ黒い点が出てカッコ悪くなってしまいます
なので今回は研磨無しです
今までフィンの研磨無しのお客様も多くおられますが研磨した部分と研磨されない部分の角の塗装が弱くなります
それが嫌なお客様は真っ黒をチョイスされます
今回のヘッドは大変!!
持ち込んで下さったタペットカバーはすり減り極端に摩耗しています
これ過走行でもこんなになりません。。。。
10万キロを超えてもオイル管理をしてればここまで摩耗することはありません
ここも当店の良品に全交換です
シリンダーをボーリングしクリアランス測定します
ダイヤルゲージを入れ!!
測定完了です
今回制作したピストンは普段の物よりハイコンプ仕様
INのバルブリセスの深さを0.8ミリ浅くしコンプレッションハイトを大きめに制作しました
なぜかと言うと以前のシートカットで30度面を大きく切り取られ燃焼室の容積が大きいからです
このピストンで圧縮圧12キロになる予定
普段の570ccと同じ圧縮圧になります
でもゼファーカムに組み替えるとリセスのクリアランスのマージンが無いのです
なのでFXカム専用設計のピストンになりました
シリンダーヘッドを組みました
このエンジンはここからが大変!
いつものタペット調整なのですがカムホルダーの摩耗が少しあります!
ヘッド単品で点検したのはこの為です!!
3・4番の排気側と7・8番の吸気側のカムホルダーに0.02~0.04ミリほどの摩耗があります
これは手の感覚なので正確な数字はは不明
測定できないので
このヘッドはマニュアルを信じて組むと打音がします
当店の基準で組んでも音が出る可能性があります
そんな時は裏技があります
にん2.425
にん2.375
これはシムですが通常は0.05ミリ刻みでしか販売されていません
しかしこのシムはメーカー純正の新車出荷時にしか組まれない0.025ミリ刻みのシム
非売品のシムです
通常のシムの倍の精度でタペット調整出来ます
これはゼファー750の新車出荷時に組まれるシムでかなりの台数のエンジンを分解しないと出てこない貴重なシム
通常は0.05のシムで規定値に収まりますがこのヘッドはその倍の精度で組まないとタペット音がします
調整完了
ゼファーに750に0.025の精度が必要な事は殆どありません
FXのヘッドでは稀にこんなのが必要な場合があります!!
例えばEXの3番をカムがバルブを抑えると4番のクリアランスは
1/100~2/100ミリ広がるからです
FXはまだ全然ましです!
今までもっと摩耗(0.03から0・06程)したヘッドを打音なく組んできたので
酷いのがZのヘッド
過激なカムを組み過ぎてカムホルダーが楕円に変形するのでこんなヘッドはとても多いです
ハイカムはカムホルダーを変形・摩耗させます
カムホルダーの交換はできないのでヘッド全部の交換が必要になります
あとカムホルダーの熱膨張を考慮して組まないと温間時に音がします
ヘッドカバーを組んでエンジン完成!!
クラッチカバーも腐食が酷かったので地元のお客様の寄付パーツ
カッコいいエンジンに仕上がりました
プッシュロッドも当店の良品に交換
以前のはひっくり返して装着されていたので二か所とも摩耗していました!
あと!
このプッシュロッドのOILシール
メーカー欠品ですが他車種流用で対策してます
もう販売終了し1年ほどでしょうか・・・・
フレームにエンジンを載せてエンジンに火入れします!
エンジン快調
とても静かなエンジン音
新車のエンジンの様に静かです
中身は全て今までのFX・ゼファー・GPZ400Fのお客様の寄付パーツです
なかなか贅沢な仕様のエンジンとなりました
早速試乗に出かけます
七曲りに来ました
そして万葉岬に上がります
気になる温間時のヘッドの音もありません
熱膨張も考慮して組んだエンジンなので完璧です
しかしエンジンが温まるとセルがキュル・・・・キュル・・・・・
と回転が遅くなります・・・・
工場に帰ってセルモーターも交換です
ゼファーのセルモーターに交換しました
FXのセルモーターは不調な物が多いのでゼファーに交換するのをお勧めします
FXのセルはエンジンがヘタって圧縮が低くなっているとよく回りますが
しっかりとエンジンを組んでこの様なハイコンプにすると不調のセルモーターが一目瞭然でわかります
前のエンジンが前のセルで始動できていたって事はかなり圧縮が低かったと思われます
ちなみにゼファー400のセルモーターは強力です
昔試作機のゼファーエンジンでコンプレッション18キロの怪物エンジンを制作しましたがそのエンジでも始動出来ました!
さすがに回転速度は遅いですが・・・・
ローで押しがけするとRがロックします
圧縮が18キロだとマフラーを外してクランキングさせるとポートから水蒸気がでます
6足発進も可能なエンジンでした
今もバッテリー二機済みで姫路の人が乗っています
こんなエンジンは乗りにくく一般的ではないですがね!
あとここでまめ知識ですがブリザーホースの出し方です
この様にテールカウル広報に出すのはNGです!!
殆どの人がこの出し方なのですが!
エンジンを停止させると水(水滴)が逆流します!!
するとエンジンの取り出し口から上に上がって→下がって→上がると!
写真の谷の部分に水が蓄積されオイル交じりの水がホースをふさいでしまいます!
試しに下がった谷の部分でホースを切ると!!
ぼたぼたぼたっと水が出てきました
おちょこ一杯分ほどなので大丈夫ですが時間をかけて蓄積されると完全にブリーザーをふさぎます!
この様に緩やかにホースを曲げてスイングアーム斜め前方に排出させてください
今までのお客様もこうしています
このホースに弁(T-REV)を付ける人も稀にいますが何も付けないで下さい
あれはゴミパーツで意味ありません
570FX完成です