本日は京都よりKZ900のボアアップで入庫です
こちらのお客様は当店でエンジン2機目!!
以前はZ550GPをボアアップしました
また以前710にボアアップしたFXのお客様と最近1079ccにボアアップしたZⅡ(D1)のお客様と同じチーム
地元のお客様が「また京都から狂った人が来てますね・・・・」
と、言っていました
バイク雑誌のロードライダーが廃刊になるらしいのですが時代ですね・・・・
バイクショップが宣伝するには雑誌が手っ取り早いってのは10年前。
10年前は雑誌のクライアントになり取材してもらう。ってのがバイク業界では常識でした
起業した頃、ボロ小屋にとある広島県の社長(お客様)が来て
「これから雑誌の時代は終わる」
「30年前のバイク雑誌を読め」
「その店が今どーなっているか調べろ」
と、言われたので調べると殆どのお店が規模縮小か廃業しているんです
これには理由がありますが長くなるのでハショリます
その社長が
「ワシが取材料を全額払うから一度試しに雑誌に取材してもらってみ」
と、一文無しの私に言って下さったので某カスタムバイク雑誌に掲載して頂いた事があるのですが私の感想も同じでした。
「雑誌の時代は終わる」です!
焼き畑農業と同じです。
1ページ30万程なのですが通常このお金誰が払ってるの?
と、なるとバイク屋ですが掘り下げるとその先のお客様になります。
30万あったらどれだけお客様のバイクに注ぎ込めるかと考えると雑誌ってどーなん?ってのが感想です
また取材に来た人が私に言った言葉は
「バイクにエンジン?」「そんなモンどーでもいいでしょ!」
「バイクは見た目ですよ」「足回りやブレーキを人は見るんですよ」
「エンジンなんか分からないでしょ」と笑っていました
確かにバイクの良さってのは写真では伝わらないと思います。
カッコ良さは伝わりますがそれ以上が無い。
その日以降無料で取材させて欲しいと言われても日本国内の取材は断っています。
アメリカに行って某有名レーサーの人と出会い聞いたのですが
その人は様々な雑誌に載っていますが
サーキットで試乗しコメントを言うのですが悪いパーツ・車両も悪いと書けない
「良い物は細かく良いと言えるが悪い物は深くコメントできない」
と言っていました。
つまり芸能人の食レポと同じでなんでも「美味い」としか言えません
なぜかと言うと宣伝の為にお金を払って下さるクライアントだからです。
雑誌の取材の費用を出して下さった広島の社長は
「いつの時代も一緒。宣伝するのはお客様の口コミが一番」
と言っていたのですがやっぱりそうだと思う。
今回入庫して下さったKZ900のお客様も初めて入庫した時は紹介なんです
その社長が
「この店にはワシみたいなお客さんがこれから来るでしょう」
「時間はかかるけど常連様や、そんな人を大切にしなさい」
と言って下さったので今でもその言葉を忘れず仕事してます
さすがにその社長の様に一人で年商300億稼ぐ様な人は居ませんが若かりし頃はヤンチャだったんだろうな・・・・
と思われる経営者のお客様が多い。笑
起業と同時に仕事と資金が無く廃業寸前だったのですがその社長のアドバイスが無ければとっくにバイク業界を辞めていました
今でも感謝しています
入庫したKZ900はこの車両
GP同様パワーアップの為入庫です
ヘッドカバーを外します!
スラッジが溜まっていますが問題なし!
分解歴も無さそうです!
ピストンの状態も良好です
シリンダーを外すとスリーブの緩みも無くとても良好です
かなりの確率でスリーブが緩んでいるのでZはOHでもエンジン分解時にスリーブの交換が必要です
新車の時から加工精度が悪かったのが多々あるみたいです
スリーブを抜き取りシリンダーをボーリング加工します
エンジンの腰下を降ろします
Fスプロケを外そうとしたら!!・・・
ナットが手で緩みました危険・・・
しかも丁数は14丁・・・・
Rスプロケが35丁だったのでえらいロングやな。。。。
と思っていたのですがこれが原因でした
腰下を降ろします
腰下を分解します
クランクは見た感じ問題なし!
点検棒もすんなり入ります!
ミッションやハウジングも問題なさそうなので良好で気になっていたマグネットローターは極上です
エンジンを全分解しサンドブラスト加工をしました
純正塗装の上からエンジン丸ごと塗装されていたのでブラストに倍程時間かかりました
綺麗な下地が完成です
そしてエンジンをリペイントしました
クランクケースのボーリングも完了です
エンジン内部の部品を洗浄し測定します
クランクシャフト良好!!
フレは5/100mm程です
Zの場合はゼファーやFXと違いどんなエンジンも受け入れている訳ではありません!!
不調でも現状エンジンが動いている方でエンジンバラバラの部品持ち込みの寄せ集めの制作は断っています
Zのエンジンの部品は余りにもトラブルが多く測定では分からないクランクシャフトのトラブルなどもあります
実際は殆どが人為的ミスによる故障なので良いベースエンジンが無くなったのが現状
本当に丁寧に組まれている物もあればやっつけ仕事で蓋しておしまいって仕事もあります
ヘッドなんかはこの様な差が大きく出ます
セミプロが組むかプロが組むかで倍以上寿命が変わります
クランクケースにクランクシャフトを組み込みます
ミッション洗浄・点検し組み込みます!!
そしてロアクランクケースを組み込みます
分解時エンジン内部がスラッジでベトベトでしたが洗えばとても綺麗になりました
Zは超長期で不動だった物も多々あるので腐食してボロボロな物もあります
内部の見た目なのでまったく関係ないのですがなんとなく気持ちいいですね
オイルポンプを組みオイルパンを組んでひっくり返します
勿論クラッチを新品に交換し強化クラッチスプリングに変更です
次はスタータークラッチです
マグネットローターはキー飛び痕もなく分離もなく状態良好
スタータークラッチも新品に交換します
組み込みます
センターボルトは強化タイプです!
ここは規定トルクではダメなのでオーバートルクになります
カバー類を組みつけ腰下完成です
次はシリンダーヘッドの修正です
EXバルブはカーボンギトギト
キャブも不調だったと思われます
Zの純正キャブと言っても調子良い物はまずありません
OH不可能で殆どのZのノーマル仕様は誤魔化しで走っているのが現状です
このヘッドだとかなり圧縮漏れをしていたと思われます
バルブのカーボンを落とします
そして45度面を研磨します
研磨完了です
このバルブは修正すればまだまだ問題なく走れます
シリンダーヘッドですがクラックもなく良好ですが!
EXのバルブガイドが摩耗しバルブがガタガタです
Zに限らずですがレシプロエンジンはEXから摩耗します
高熱にが抜けていくのもですが一番は燃焼後のカーボンがEXのバルブガイドを痛めます
バルブステムは上下にストロークしカーボンを常に擦り落としています
しかし吸気側は混合気と風圧(負圧)だけなので簡単には摩耗しません
なので吸気のバルブガイドの寿命は排気側の2倍以上です
なのでEXのバルブガイドを交換するついでにIN側のガイドも交換されている物が多々ありますが無駄な部品と工賃を払いヘッドを短命化させています
良品を交換する行為はお金の無駄で何よりステムの突き出し量を増やしてしまいます
なので今回もEXのガイドのみ交換します
ヘッドを加熱します
400度以上まで加熱します
しかし!!今回のヘッドは加熱しても抜けないと判断
加熱して一発リーマーを叩いた感触で判断します
全開は加熱し抜き取る方法を紹介しましたがあれは上級者向け
今回は固着しているので超硬刃で切り取ります
このヘッドは加熱して抜くと恐らくクラックが入ります
Zのヘッドで内燃機屋が加熱し力任せに仕事をしてしまうので本当に良品のヘッドが少なくなりました
そもそもガイド交換必要ないのに外注に出してわざわざお金払って壊されたZのヘッドをどれだけ見てきたか
どの様に切り取るのかと言うと!
こんな感じでペラペラになるまで拡張していきます
最後になるとこんな感じになります
ここまで来ると軽く叩くだけでポロっと落ちます
初心者にはこの方法をお勧めしますがヘッド側の内径を傷付けると終わりです
どちらも難しいかな
抜くとこんな感じです
角を棒や鑢で面取りし掃除すると入れやすいです
ガイドを入れる時はヘッドを加熱しガイドを冷却し圧入します
時間勝負なので今回は写真ありません
ガイド交換完了です
この仕事は外注に出すと何されるか分からないので細心の注意が必要です
45度面をシートカットし60度と30度で45度面の幅を整えました
シートカット完了です
勿論45度面の加工は最小限です
カムメタルを交換してヘッドと仮組します
まずはカムホルダーのトルクが問題ないかです
2か所バカになりかけていたのでロングヘリサートを入れました
心配なのがここ!!
カムホルダーが変形しカムシャフトの遊びがどれだけあるかです
ノーマルカムでも多少はあるのですがハイカムだとここが変形し1・4と2・3を圧縮上死点にしてクリアランスを測定すると大きく異なるのがZのシリンダーヘッド!!
幸いこのヘッドはノーマルカムなのでここの変形は殆ど無いと思われます
リフト量が高く強化スプリングを組むとカムホルダーに大きな負荷がかかります
バルブをすり合わせしバルブを組み込みタペット調整します
一番薄いシムで2.50なのでヘッドをシリンダーに組んでも恐らく2.40以下のシムを組まずに済みます
シリンダーヘッド完成です
フィンの研磨は無しです
フィンの側面に少しでも傷(打痕)があると研磨するとその部分が目立つので研磨しない方が見た目が良いです
シリンダーのボーリングが完了したのでダイヤルゲージを入れ測定します
測定完了です
このシリンダーも溶接肉盛りをしてガスケットの接触面積を広げる加工をしています
でないとオイルリークしやすくなります
ピストンとシリンダーを組み込みます
今回はZ1用ピストンなのでスキッシュエリアはZ2より少し低めです
Z1とZ2でピストンのスキッシュエリアが異なります
Z1専用のピストンでも注意が必要です!
Zのシリンダーですが面研をした場合一度面を出すと0.2ミリ程研磨する事になります
スリーブを抜いた時に下の面も面研すると合計で0.4~0.5ミリ程シリンダーの全長が短くなります
するとスキッシュエリアが狭くなりエンジンが加熱され熱くなるとピストンとヘッドが干渉してしまう場合があります!
なので専用のピストンでもスキッシュエリアを加工しないといけない場合もあります
シリンダーヘッドを組みます
そしてカムシャフトを組みます
タペット調整ですがこのヘッドもとても良好です
1・4を圧縮上死点にして調整して!
2・3を上死点にしてもう一度調整します
一番薄いシムで2.40となりました
ステムヘッド研磨無しでこのクリアランスを確保できれば次もその次もOHが可能です
ヘッドカバーを組んでエンジン点火
FCRキャブとの相性抜群です
早速試乗をしに万葉岬に行きました
するとここで川崎重工の元二輪開発部の人と遭遇
定年して今は年金生活をされているらしいのですが!
「このバイク!私が川崎に入社した頃に先輩がテスト走行していたんです」
と話しかけてきました
当時は管理が甘かったので新車をカワサキ重工の社員がパクって帰っていたのですが
(それは地元では有名な話し)
なんとジェットスキーも数台パクられたらしい!
どないしてジェットスキーを持って帰ったのはは不明ですが
あと販売前のバイクを街中でテスト走行しているとその車両を盗難されたこともあったらしい
色々と面白い話しを聞けました
「昔のバイクをこんなに綺麗に乗って下さって嬉しいです」
との事です
試乗していると現役のカワサキの社員や元社員から話しかけられる事が年に数回あります
やはりFCRキャブとの相性は抜群です
今回入庫されたお客様の同じチーム内に当店でボアアップしたエンジンが4機あるのですがこのエンジンが最強となりました
流石に圧倒的なエンジンの力があります
最終点検で安富ダムに来ました
KZ1230怪力エンジン完成です