大変長らくお待たせしました!
入庫した車両です!!
これを見て最高の車両やん!!と言う人はお目が高い!
国内物のE4です!!
これからオーナー様が手を入れ綺麗な車体に仕上げます!!
なのでまずはエンジン!!
エンジンを強力な怪物に仕上げます!!
エンジンを分解すると!!
内部のカムはヨシムラのカムシャフトに!
ヘッドをめくると!
タカトリの580ccピストンでした!!
このエンジンを組んで火入れされていないみたいですが不自然な組付けだったりシリンダーのボーリングもタカトリの指定のボーリング加工ではないので何故組んで長年放置されたのかは不明です!
サークリップもBRCのリプロタイプのクリップが入っていたりで組んで放置のエンジンは経験上なにかヤバい事が多いです
組んだけど始動させるのが怖い人あるある・・・のエンジン
何か心残りがあるから始動できなかった場合があります!
このFXのエンジンが回りに回って今のオーナー様にたどり着きました
腰下を分解します!!
見た感じは異常なし・・・
ミッションを外すとミッションのブッシングのピンの頭が沈んでいます!!
ここはメーカーの加工精度が悪く通常より穴が深くめり込んでしまう場合がありますがこのエンジンは違う・・・
ブッシングの穴を合わさずクランクケースを締めこんだので突き上げられクラックが入っています!
ここは後から修理します!
ヘッドカバーのネジが折れてタップをかけられているのですがズレているので修理します!
リューターで残ったボルトを削り取りロングヘリサートで修理しました!
そしてクランクケースの修理です!
クラックのある場所は溶接で溶かしてくっつけます!
ピンの頭を溶接肉盛りしてピンを出します!
カチッ!とカラーが位置決めの穴に決まればOKです!
ピンポイントで溶接しないといけないので溶接が難儀です
クランクケースの修理をしてエンジンをブラスト処理します!!
古い塗装と錆を完全に取り除きます!!
どんな塗装をするにも下地が命!!
ここを綺麗にしないと外観が台無しです!
半艶の黒に塗装してクランクケースをボーリングしました!
ケースを洗浄しクランクメタルの測定をします!
今回のケースに適合するのはブラウンのクランクメタルです!!
クリアランスを測定して規定値に持っていくのですが既製品のメタルでは規定値に持っていけない場合も稀にあります!
そんな時は合わせる方法があるのですがこれも企業秘密です
ここはエンジンの最も大切な部分で規定値から少しでもズレるとエンジンの寿命が一気に短くなります!
メタルを交換し!
550クランクを移植します!
550クランクとコンロッドを装着します!!
ミッションを分解洗浄し組み込みます!!
ロアケースを装着しました!!
ステンの綺麗なネジに変更します!!
ワンウェイクラッチとオイルポンプを組み込みます!
オイルパンを装着しひっくり返しFXクラッチを装着します!!
ゼファークラッチではなくFXクラッチの仕様です!
クラッチカバーを装着しエンジン腰下完成です!
最近ではゼファーのクラッチが高騰してなかなか購入できない貴重品になりましたが高性能なクラッチにしたければゼファークラッチの方が圧倒的に優秀です
プッシュロッド式のクラッチの場合ジャダー現象と言う症状が出る場合があります!
ジャダー現象とはローギアを入れて発進する時にクラッチからうなり音が出る現象です!
クラッチが繋がる瞬間にクラッチがはじかれる現象でブレーキのうなり音と似た現象です!
ハイパワーエンジンに強化クラッチは必ず必要ですがFXやGPのプッシュロッド式エンジンだとジャダー現象は発生しやすいです!
これは750のGPエンジンやZのエンジンでも稀に発生しますがザッパー系エンジンの方が何故か出やすい傾向があります!
この音が出た場合はクラッチ板のスチールプレートをひっくり返す事により直ります!
シリンダーヘッドに取り掛かります!
バルブのカーボンを落とし45度面を研磨機で修正しました!
シリンダーヘッドの修正をします!
元々シートカットはした痕跡がありましたが手直しが必要だったので修正します!
45度面をシートカットし70度でバルブシート内径を拡張します!
全てのシートリングを加工しました!
バルブスプリングを入れるのですが違和感を感じました・・・・
バルブスプリングの全長が長いので何かの流用か品番違いのスプリングなのか・・・・
コイルピッチも短いので左のバルブスプリングに全交換します!
シリンダーヘッドの組み立て完了です!!
今回のヘッドはポート系拡張済みだったのでこのままです!
吸排気共に拡張されています!
シリンダーヘッド完成です
このFXのオーナー様はゼファーのボアアップエンジンも所有されているらしく
随分昔・・・
東京のDR須田で制作した630エンジンらしいです!!
当時630エンジンを取り扱っていたのは関西だとタカトリで関東だとDR須田と光輪モータース
光輪モータースは破産し平成の不況の時代にタカトリが630から650ccのピストンを開発します。
650ccをリリースする前に680のエンジンを二機制作し650ccを量産します!
この二機のうち一機は私のサイドカーに搭載しています!
平成中頃ゼファーエンジンの潜在能力の高さはエンジンチューナーは気づいていたのですが何故この時代に発展しなかったのかは理由があります!!
まず大不況だったのでバイク処ではなかったのが一つ!
これはバイク業界に限った事ではありませんね
もう一つはゼファーがそこまで人気で価値の高いバイクではなかった事!
ゼファーをカスタムするならZを買っていた時代です
なのでこのFXのオーナー様が所有するDS須田のエンジンは今となってはとても貴重なエンジンです!
実はDR須田の前社長はボンネビルのワールドファイナルの参戦歴があり話を伺いに東京まで行った事があります。
私はスピードウィークだったのであまり参考にはならなかったのですが社長の奥様が作ったと言う自家製のケーキを一緒に食べた事があります。
この頃駆け出しの22、3歳だった私に色々とレクチャーして下さる優しい社長でした
あの時代タカトリとSR須田はゼファーのエンジンチューニングの先駆けで日本では有名でしたがDS須田は様々なエンジンを幅広くチューニングしていてタカトリはカワサキの空冷エンジンを深堀していた感じかな・・・
630ccエンジンは平成の時代にゼファーエンジンが進化する過程で誕生したエンジンです
当時でも部品代だけでもとても高額なピストンキットだったので若い時に630エンジンを制作するというのはとてもハードルが高かったと思います!
ビッグブロックシリンダーを装着しました
そしてFXヘッドを装着します!!
エンジンらしくなってきました!!
FX乗りのならFXヘッドと言う事でパワーでは圧倒的不利でもこのシリンダーヘッドを装着する選択です
そしてカムを装着するのですが今回はヨシムラのカムではなくFXのカムを装着です!!
理由はここ!!
機械式カムを組むのでタコメーターを電気式に交換する必要が無い為!!
ここもFX乗りにとって悩みどころで電気式メーターを嫌がる人も多いです!!
FX用のカムは全400エンジンに流用可能ですがFXの機械式メーターを入れる場合はFX用のカムで無くてはいけません
ヘッドカバーを装着し点火装置を付けてエンジンに火入れします
何年も冬眠していたエンジンに火が入りました!!
とても静かで快調なエンジンです!!
ハイカムからFXカムなのでパワーは下がりますがトルクが太く燃費がとても良いと言う長所があります。
STDカムだと
GPZ400F・ゼファー・Z400GP・FXの順番でローカム側になるのですが今後の石油価格・EV・少子高齢化を考えると間違いなく航続距離が良いエンジンが必要になります。
今後ガソリンスタンドは間違いなく減るのでなんせ燃費の良いエンジンが良いエンジンとなります!
ビッグブロックの再開発と同時に710cc以上の燃費の良いピストン形状を同時に模索中です
これからの時代はパワーと燃費の良さが評価される時代が来ると確信しているのでこの仕様のエンジンがこれからの時代のスタンダードになるかもしれませんね!
Z710FX完成です