本日は山口県よりZ1000Jのボアアップのご依頼です
入庫した車両がこの車両!
他店でエンジンフルオーバーホールされているらしいのですが・・・
4サイクルのはずのJが2サイクルに改造されたらしく
「オイル上がり半端ないので直してほしい」
とのご依頼です
トラブルの原因は間違いなく腰上・・・・
どうせエンジン開けるなら体感できるピストンを組んでほしいとのことです
早速分解します
腰上を分解します!
事故で足が不自由なのでエンジンの腰上を分解し軽くします!
シリンダーを段ボールの上に置くと!!!
スリーブが「ニョキ!」っと出てきました
裏から手で押すと!
「ズボ・・・・」
これ・・・Jに限らずZではよくあるんです
「よく問い合わせでZのエンジンをオーバーホールしてほしい」
と、聞かれるのですがオーバーホールでもスリーブ交換が必要な物は多くスリーブ交換せずボーリングオンリーのピストンを組むのはとてもリスクが高いんです
今回はスリーブ打ち替えのボーリングなので関係なし!
ここのスリーブはユルユルだったので回転してました
横に傷が入ってます
残りの3本もユルユル!
加熱温度70度で全てコロンッ!と抜けました
ZってOリングが入ってないのでオイルリークしやすいんです
勿論スリーブ交換する場合はOリング圧入は必要なのですが、そもそもOリングの必要性を理解していないお店も多くOリングなくてもスリーブとシリンダーのクリアランスを適切にすれば数年は全く問題なく走ります
Z400FXはOリングありませんがゼファーではOリングがシリンダー内部に入っています
Zも同じ原理でオイルリークするのでOリング溝を切り圧入しときます
このシリンダーは幸い上面の面研されてないのでまったく問題なく修理できます
腰下を分解して真っ先に点検するのがクランク
Zのクランクはとてもトラブルが多いので分解前にクランクから音が出てないか入念に点検するのですが異音なく動いていたので一安心!
とは行きません
曲がりないか点検するとど真ん中が曲がり1/100
なので振れ2/100
センターの曲がり1/100はとても良品です
Zのクランクに限らず勘違いが多いのですが曲がりとはクランクのセンターからどれだけズレているかが曲がりです!
振れとは曲がりに対して2倍の数字です
で!Zのクランクの修正ですがこれ非常に難しいんです・・・
全分解してベアリングを交換して組んでセンター出しして溶接・・・
これだけでは安心出来ません
過去にフルリビルドされたクランクから異常な音がしてクランク交換したことあります
コンロッドからの音でしたがベアリングの内側!
ジャーナル部が痩せていたみたいです・・・・
ゼファーのエンジンの場合は硬質メッキ、研磨が可能でダメな物・良い物の判断がすぐ出来ますがZのエンジンは見た目、点検では分からないことがあるんです
エンジン内部は当時物パーツが惜しげもなく使われていました
ステムシールはこんな感じ
ステムシールはバルブガイドにグッっと押し込ん入れるのですがこのステムシールは乗っかっていただけでした
良かった・・・・
マジで2サイクルに改造されてなくて
エンジンをサンドブラストしました
オイルラインに砂が入らない様にゴム栓でしっかり蓋してその上からマスキングしてブラストしないと後で面倒なことになるので注意です
綺麗に仕上がりました
クランクケースも今後77ミリまでボアアップできる様にボーリングしました!
スリーブ外径81ミリがZのエンジンの安全マージンをもっての限界と私は思っています。
ダミーシリンダーでクランクケースボーリングするとほんの少しだけ!
かすめるぐらいのボーリングなんです!
ダミーヘッドは知ってるけどダミーシリンダーって何?・・・
と、思う人も多いと思いますがダミーシリンダーはシリンダーに対して完璧なオフセット、クランクケースに対して垂直に加工する為の工具です
完璧なオフセットで加工するとJの場合ホントにバリ取りレベルのボーリングになります。
Z1000やMK2のケースをボーリングすると結構大げさに削れますが結局のところZのエンジンの限界はクランクケースが基準になってしまうんです
上の写真を見て分かる様にメーカーの人が考えることも民間企業が考えることも同じなんです
クランクケースを洗浄・点検します!
Zのエンジンはクランクのジャーナル部トラブル多いのですがこのエンジンは良品
クランクを組み!
ミッションを組み!
ロアケースを組みます
スタータークラッチ・・・・
摩耗してないけど・・・・
交換しときます!
そしてエンジンの腰下が完成です
クラッチは純正でクラッチスプリングはウチの強化クラッチスプリングです
次はバルブの45度面を研磨します!
研磨完了!!
ゼファー750のバルブや400の輸出仕様と素材は同じです
バルブは修正も交換もしてなかったみたいですがシートカットはしてあります。
純正工具のシートカッターではなく内燃機屋で3面同時加工されているみたいです
虫食いも少ないので表面をサッと加工すると・・・・・
爆発的に右上の45度面が広がり
左下は規定値の当たり幅になりました
これ・・・
内燃機屋の失敗です・・・・・
最新式のシートカッターってバルブガイドのセンター出しを機械が勝手に自動補正して加工してくれるのですが所詮は機械。。。
パイロットステムを1/100ミリ単位で調整し手作業で加工すると精度の悪さが分かります・・・・
でもこれは精度悪すぎ・・・・
4番の吸気も排気もこんなにズレていました
他の6か所はややズレ・・・
排気側を修正しました
両方修正しました!
これでシートリングは良いのですがこーなるとバルブの突き出し量が増えタペット調整出来なくなります
バルブはリフェーサー加工して焼き入れして組みます
シートカット完了です
Zってシートカットあまり出来ないのでこのエンジンみたいに酷いシートカットしてたら次オーバーホールする時こまるんです
以前のシートカットが悪いのでヘッドは短命になります。
シートリング交換となれば一般的なOHの工賃を大きくオーバーします。
これ・・・
Zではとてもとても多いんです
過走行でヘッドがポシャっているのもありますが人為的ミスもとても多いんです
例えばバルブガイドの交換・・・・
やらなくてええ物をわざわざ交換しシートカットし過ぎてタペット調整出来なくなる物はとても多いです
確かにZはガイドにガタがある物も稀にありますが交換しなくても良い物も多いです
Zは良品のバルブガイドをわざわざ交換して割れたりタペット調整出来なくなってしまうヘッドって多いんです。。。
そもそもヘッドを修正する時バルブガイドを交換しないといけない物ってホントに稀で国内車では100機に1機もありません
雑誌を見て「バルブガイド交換=良い仕事」ってイメージがありますが
「バルブガイドを交換しないといけない物はそれほど走り込んだ状態の悪いヘッド」と考えてもらった方が伝わりやすいかな
ガイドの外周からオイル下がりする場合もあるのでそれは点検が必要です
カムホルダーは2か所を除いて全部メネジがバカになっていました
Jヘッドは当たり前ですがここはロングヘリサート入れます
2か所はすでに入っていたのでそのまま・・・
14か所ヘリサート入れます
完了
次はバルブをすり合わせしリフェーサー加工し焼き入れしてタペット調整します
ここである程度調整します
でも4番のINのシムは2.25
何十年後か、またOHしたいとなった時出来るかは微妙な感じです
これ以上はリフェーサー加工出来ないので4番はシートリング打ち替えが必要かもしれません
Zのエンジンも1発目から丁寧にシートカットすればこんなことで悩まないのですが・・・
前にOHした時どんな仕事されてるかで今後OH出来るかが決まります。
簡単に言うとヘッドの寿命が決まります
排気側は良好!
2.40以下のシムは使っていません
ヘッド単品でタペット調整してもエンジンに組み付けるとクリアランスが変わるので組んでから微調整が必要です
今回組むのはワイセコの75ミリです
アメリカに居た時「お前たちの国のカワサキだろ?」
「お前たちの国にピストンはないのか?」
と言われた言葉が突き刺さります・・・・滝汗
メイドインジャパンのJのピストンってないんです
あるのかもしれませんがボアアップって言えるほど排気量上がりません
ウチの77ミリピストン入れたら?と思うかもしれませんが・・・
ウチのピストンはZ1の専用設計・・・・
J設計でZ1様を制作することも可能って言えば可能なのですが・・・
ワイセコって裏の金型Z系は全部使いまわしなんです!
ノーマルハと見比べるとハイコンプピストン・・・・
裏の金型は通常のZ1と同じなのでこのピストンのコンプレッションハイとの肉厚って約9ミリもあるんです
ウチのピストンがJ設計でZ1流用しなかったのはこれが嫌だったからです
ワイセコピストンは膨張率が大きいのが嫌なところ・・・
そもそも鍛造ピストンって現代の鋳造ピストンに比べ膨張率が大きいんです
皆さま「鍛造は耐久性がある」これはご存知かと思います。
確かにハンマーでどついたら鍛造の方が耐久性あります。
でもピストンがトラブル発生する時ってピストンが高温になってる時です!
私は膨張率が少ないピストンをチョイスします
「鋳造ピストンは耐久性が」と言っても世にある車やバイクの9割以上が鋳造ピストンなんです
あと・・・鍛造と鋳造どっとが軽い?となると同じ体積なら鋳造の方が軽いです!←誤解が多いので・・・
鍛造は密度がある分重くなります。
で、このピストンハイコンプですが膨張率が大きいので加工します
頭を3ミリ落としました
これでもノーマルよりハイコンプなんです
奥にあるのは同じアメリカ帝国の76ミリZ1なので気にしないでください。
残念ながら日本のエンジンチューナーはカワサキにアメリカ産ヨーロッパ産を組むしか出来ません
ちっぽけな島国ってことです
今でもコンプレッションハイトの肉厚6ミリです
鋳造ピストンではこれが安全マージンもって普通ですが鍛造にしてはかなり肉厚
ハイコンプピストンはアイドリング時の熱が半端なくなります
今回ワイセコなので余計にです
ダイヤルゲージを入れクリアランス測定します!
クリアランスは5/100~6/100のクリアランスにします!
クロスハッチも若干深く設定します
鍛造と鋳造の場合クロスハッチの深さも変わるので注意が必要です!
ワイセコのピストンは面が荒くオイルの保持性を良くする様に作られています!
しかし膨張率が大きいのでシリンダー側のクロスハッチがすぐに消えてしまうんです
ハイコンプならなおさらです
ピストンとシリンダーを組み込みます
シリンダーは溶接肉盛りしてガスケットの接触面積を増やしオイルリーク対策してます
Oリングも圧入しました
カチカチだったカムチェーンガイドも全部新品
伸びたカムチェーンも勿論新品です
ZのローラーチェーンよりもJのサイレントチェーンの方が伸びます
Z1もですがJエンジンの場合とくに腰上だけOHと言うのは得策ではなくカムチェーンが伸びるとバルブタイミングは後進します!
IN側はEXよりも後進します
新品が手に入るので妥協せず交換してください
横から見るとこんな感じです
Jは燃焼室が大きいので削り過ぎると圧縮圧が低くなりますが上げ過ぎるとクランクケースがポシャります
この形状でもっとボアを上げ77ミリにしたいのですがウチは個人経営のお店なのでまだJピストンは作れないのが現状です
Jはアメリカ帝国のを組むしかできません
先日色々考えて今までの試作ピストンや研究開発費を考えるとフェラーリ買えているのですが・・・未だに、よど号一台しかありません
なにやってんねやろ・・・・と悲しくなります
嫁にも申訳ないと思いながら。
職人と商売人の違いって大きいんです
気を取り直して!
シリンダーヘッドを組み込みカムメタルも交換します
カムはノーマルです
Z1と違い1166ccでノーマルカムでも丁寧に組めばJは結構パワー出ます!!
過激なカムはヘッドを短命化させます
Zはとくに!!
カムホルダーが楕円に変形しカタカタうるさいヘッドがあり基本円でクリアランス測定するのですが角度が変わるとクリアランスが変わる物もとても多いです!
カム山のトラブルは肉盛りカムでは多いのですがハイカムが原因でカムホルダーの変形も多いので組むとすればヨシムラのST1ぐらいが私は好きです!
こーなるとカムホルダーの中でカムが遊びカムメタル交換しても新品カム入れても音はなかなか消えません
2バルブエンジンにハイカム組んだとこで4バルブに勝てるわけもなく2バルブの特性を利用して低速でもスピードが出るエンジンの方が好きなので
シャーシダイナモの上で速くしたければバンバンハイコンプにしてハイカム組むべきですが勿論エンジンは短命になります。
ゼファーもですがハイカムほどエンジンを短命にする部品はありません
ちなみにこのJヘッドはとても状態が良かったです
もう一度タペット調整しエンジン完成です
エンジン点火
静かで綺麗なエンジン音
ハンドルに来る振動がたまらん
あっ!
そーそー!
川崎重工のチーム38が日本に帰国されたので打ち上げに呼ばれたので行ってまいりました
H2Rがついにボンネビル・スピードウィークに行ったのです
チーム38のボンネビル・スピードウィークのメンバーの方達とお会いするのは日本では初めて
同じ兵庫県の明石市と姫路市で結構近いのですがなぜかアメリカででしか会ったことなかったんです
久しぶりに楽しい話しが出来ました
理解しにくいかもしれませんがボンネビルってエンジンのパワーじゃないんです!
一番左の赤色(2010年)のレコードブックは東京のブルーサンダースの社長から頂いた物
SCTAの管轄するレースはエル・ミラージュとボンネビル・スピードウィークとワールドファイナルがあります。
当時ワタス24歳だったかな?・・・・
これにはエル・ミラージュとボンネビルの世界最高速の歴史が載っています
この歴史にチャレンジし多くのライダー・ドライバーは命を落としました。
姫路バイパスで爆走していた若い私はこのレコード記録を見て
「世界記録たいしたことないやん」
と、思ったのですが。。。。
本当に甘かった
車両に鉛を大量に積まないといけない。とか
タイヤは新品は良くない。とか
ボンネビルはエンジンのパワーじゃない。とか
言っても変人扱いしかされませんでしたがようやく分かってくれる人が日本に居てしかも兵庫県に!!!
とてもとても楽しい宴会でした
今年は子供が心配でUTには行けなかったのですが
次の車両制作中です
ゼファー1200エンジンです!!(ゼファー1100のエンジンがベースではありません)
話しを戻しまして!
Z1000Jの試乗で万葉岬まで行ってきました
さすがJ!!
排気量は低めですがなかなかエンジンにチカラあんなー
FCRとの相性も良いです
この場所姫路市周辺の頭キレたライダーが結構集まるのですが本日は平日なのでガラガラでした
次の日!
アメリカから荷物が届きました
ボンネビル友達の方が今年カリフォルニアのロードスターチームで参戦されたのでアメリカから今年のレギュレーションブックを送って下さいました
これを解読してもチンプンカンプンでレギュレーションはレース1か月前まで予告なく変更されるのでアメリカ人以外の外国人にとってはかなり厳しい
有難う御座います
本日は減速比調整で試乗です
ローソンにで少し休憩していると、若い16?ぐらいの子が来て
「カッコいいですねー!!!」
「僕今中型免許取りに行っているんです!!!」
と、話しかけられ
「何乗るん?」と聞くと
「僕はスズキのGSに乗ろうかと思うんです」
と!!
言い出したので!!!
「男はカワサキやろ!?」
「カワサキのGPZとかFXとかゼファーやないんか!?」
と言うと!カワサキに乗りたくなったらしい
良いアドバイスをすると気持ちが良いですね
これから試乗していきます